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全有機体炭素(TOC)の測定法について

 

全有機体炭素(TOC:Total Organic Carbon)は水中に存在する有機物の総量を、有機物中に含まれる炭素量で表わした「水の汚れ」を示す指標の一つとして用いられています。

 

有機汚濁指標のBOD(生物化学的酸素要求量)、COD(化学的酸素要求量)、過マンガン酸カリ消費試験と比較すると、TOCは試料中の共存物質からの妨害に強く、より正確に測定できることから、半導体製造工程の洗浄用超純水、表層水、排水など幅広い分野の有機性汚濁の指標として用いられ、水道水質基準項目としても、平成17年4月に採用されています。

 

この広く普及している全有機体炭素計(TOC計)について、燃焼酸化方式を中心に測定原理と機器構成についてご紹介します。

 

全有機体炭素計の測定の原理

 

水中の炭素について、その形態別に分類すると次のとおりになります。

 

全炭素(TC:Total Carbon)は、水中に存在するすべての炭素を指し、全有機体炭素(TOC:Total Organic Carbon)と無機体炭素(IC:Inorganic carbon)に分けられます。

 

更に全有機体炭素は,溶存性有機体炭素(DOC:Dissolved Organic Carbon)と粒子性有機炭素(POC:Particulate Organic Carbon)に分類され、「懸濁物質(SS)」は、粒子性有機炭素に含まれます。

 

測定原理は、試料に含まれる有機物を酸化分解すると二酸化炭素が発生しますが、その二酸化炭素の量は、試料中の有機物中に含まれる炭素量に比例することから、試料中の有機物の総量(TOC)の定量に利用するものです。

但し、実試料には無機物質由来のの炭素も含まれているため、前処理の操作が必要になります。

  

水中の無機体炭素は、炭酸イオン(CO32)、炭酸水素イオン(HCO3)、炭酸(H2CO3)として存在します。

図示のとおり、pHが4以下になるとそのほとんどが炭酸となるため、試料を予め酸性にして、二酸化炭素を含まない純空気で通気すると、試料中の無機体炭素を二酸化炭素として除去することができます。但し、二酸化炭素を除去する際,揮発性の有機炭素も同時に失われる可能性があるため,TOCではなく特に不揮発性有機炭素(NPOC)と呼ばれます。

toc-2 

試料から予め無機体炭素を除去してから測定する方法の他に、試料の全炭素(TC) を測定した後、無機体炭素(IC)を測定し、TC の濃度値からIC の濃度値を差し引くという方法があります。

ただし、河川や湖沼といった環境水の測定では、炭酸カルシウムや炭酸マグネシウム等の硬度由来の無機体炭素が全炭素に占める比率が極めて大きい場合は、「差し引き法」では、TC とIC の各測定誤差が相乗的に作用して誤差が大きくなることがあるため注意が必要です。

 

有機物の酸化方法

有機物の酸化方法には、燃焼酸化方式と湿式酸化方式の2種類があります。

 

燃焼酸化方式

高温(650℃~ 1,200℃)の燃焼炉に試料を注入し、試料中の有機物を、燃やして二酸化炭素を生成させる方法です。

高温で燃焼させるため、難分解性の有機物や懸濁物質などの粒子性有機体炭素も完全に酸化分解することができる長所があります。

 

湿式酸化方式

試料に酸化剤(ペルオキソ二硫酸ナトリウム)を添加し、有機物を化学的酸化により分解して二酸化炭素を生成させる方法です。

加熱や紫外線照射を併用して酸化反応を補助する方式もありますが、化学酸化力は燃焼式に比較して劣り、懸濁物質などの粒子性有機体炭素の回収率は極めて低くなります。

 

特に、環境分野の試料では、懸濁物質など不溶性の有機物が多く含まれるため、不溶性の有機物の検出に優れる燃焼酸化法が普及しています。

 

発生した二酸化炭素を定量するには、非分散形赤外線ガス検出器(NDIR)が用いられます。二酸化炭素は、特定波長の赤外線を吸収するという法則を利用したもので、検出の選択性がよく他共存成分による妨害を受けにくい利点があります。

 

全有機体炭素計の構成例

測定の流れは下図のとおりです。

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燃焼酸化方式の全有機体炭素計の構成例を示します。

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燃焼管には触媒となる担体を入れ、燃焼管内に試料が所定時間滞留するように設計されています。燃焼管への試料の注入はシリンジポンプを用いますが、その他に滴下方式、空気圧やペリスタポンプによる注入方式など各種の方法が考えられています。

 

燃焼管から発生する二酸化炭素には、試料由来の水分や水蒸気が混在していることから、電子冷却・除湿器で除去した後にNDIR 検出器で定量します。

 

燃焼管からの二酸化炭素の発生状態は均一ではなく、NDIR 検出器の出力は下図のようなピーク形状となります。

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このピーク形状は、有機物の種類や測定条件により変化しますが、有機炭素量はこのピーク面積に比例するため、既知濃度の標準溶液の測定値とピーク面積を比較することで、未知試料の有機体炭素濃度を算出します。