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厨房の衛生点検「従業員の個人衛生」

従業員は衛生管理に直接的、間接的に影響を与えています。直接的とは従業員自身の作業による異物混入や二次汚染などであり、間接的とは従業員自身の知識や理解度が製品に影響を与えることです。

まず、直接的な影響として、主に異物混入と二次汚染です。これらを防ぐために個人衛生管理を徹底することが重要なポイントとなります。その際には食品の製造、加工に携わる自分自身がリスク要因であることを認識することが必要となります。

食品への異物混入は目で見えるものであることから、クレームにつながりやすく、最近、特に消費者の意識も高くなっており、異物混入に関して非常に神経質になっていますので、リスクを低減することが求められています。人由来の異物混入には毛髪類、ユニホームに付着しているもの、ペンなどの所有物等があります。

大切なのは、「ユニホームに着替えているから大丈夫」、「このペンは異物混入にはならない」などといった思い込みをせず、「なぜ、その選択がリスクを下げているのか?」ということを理解することです。異物混入をゼロにすることは難しいことですが、理解と意識で発生を抑えることはできるはずです。ここでは直接的影響について考えて見たいと思います。

 

 

毛髪の混入

毛髪の混入を防止するためには、混入しにくい帽子を着用することですが、休憩 時など防止を着脱するときに適切な対応をしていないと、いくら良い帽子を使用していてもその良さを活かしきれません。

休憩するとき帽子を上着等のポケットに入れることで毛髪が付着する危険性があります。着脱するときの危険性に対する認識があれば再度帽子を着用するときにチェックするなどの対策もできます。

調理場や食品の製造ライン上に毛髪が落ちていることは少ないと考えますが、それ以外の場所、例えば休憩室やロッカーなどに落ちている毛髪が気づかないうちに静電気等で衣類に付着することも多いかもしれません。そういった場所も定期的な清掃で、落ちている毛髪等を取り除いておくことが大切です。

 

ペンなどの備品

できる限り備品は持ち歩かないことが望ましいのですが、記録をとるためなどに必要となる場合があります。その時には、自分の体から極力離れないような工夫(例えばひもを利用して首からぶら下げておくなど)が必要となります。

シャープペンや鉛筆など芯が折れるものは使用せず、ペンもノック式のものを使用しキャップのあるものは使用しないほうが異物混入のリスクを減らすことができます。

 

二次汚染

食中毒予防の三原則として「つけない」「増やさない」「殺す」があります。これらは「二次汚染防止」「適切な温度管理」「加熱等の殺菌」と言い換えることもできます。その一つである二次汚染防止は調理器具や調理機器なども汚染源となりますが、最も汚染源となる危険性が高いのは従事者であるということを認識しなくてはなりません。

食品取扱い従事者の手指を介し、細菌や汚れが食品に移ることもありますし従事者が保有するウイルスなどが食品に移ることも考えられます。

 

二次汚染を防止するためのポイントは?

 

・正しい手洗い

食品を取り扱う作業をする前に正しい手洗いを行うことが重要となります。

手の表面には、汚れや一時的に付着している通過菌、もともと付着している常在菌が存在します。食品衛生で問題にされるのは、汚れと通過菌(食中毒菌の多くは通過菌)ですので、これらを効果的に除去することが正しい手洗いとなり、「衛生的な手洗い」と呼ばれます。

衛生的な手洗いでは、手洗い洗剤で正しい手順で洗い、ペーパータオル等で水分を十分除去した後、アルコール等の消毒液等を噴霧することですが、手を洗うタイミングも重要となります。

作業開始時、作業再開始時は当然ですが、作業の変わり目、作業区域を移動したとき、汚染物に触れたとき、そして、用便後にも行わなければなりません。

人の腸でのみ増殖するノロウイルスは、便とともに排泄されます。そのために、用便後に手を洗うことがノロウイルスによる事故を防ぐ最も重要な対策となります。

また、ノロウイルスはアルコール消毒だけでは対処できません。大量調理施設管理マニュアルにおいても、ノロウイルス対策として二回以上の手洗いを推奨しています。手を洗うことによって、物理的にノロウイルスを除去することが重要となることを改めて認識していただきたいと思います。

 

・手袋の正しい活用

食品を取り扱う作業では、衛生手袋を着用することが多く、特に、生で食する食品、加熱調理後の食品を取り扱うときには必ず衛生手袋の着用していただきたいと思います。

何故なら、このような食品はその後に加熱工程がないので、絶対に汚染してはならないもので、手袋を着用することで、ノロウイルスやブドウ球菌などの微生物による汚染を低減できるからです。

しかし、手袋を着用している場合でも定期的な消毒は必要となります。これは作業していると手袋の表面にも微生物が付着する可能性があるからで、特に取り扱う食品が変わったり、長時間作業する場合には消毒をする必要があり、手袋ははずしたら新しいものと交換する習慣付けも必要ではないでしょうか。

 

・マスクの着用

直接食品に触れるわけではありませんがくしゃみや咳により唾などの飛沫により、食品を汚染する危険性があります。口腔、鼻腔からの汚染がないようにマスクは正しく、鼻まで覆うように着用してください。

 

・健康管理

食品の汚染では、ノロウイルスのように従業員自身が原因となる可能性があります。

食品取扱い従事者は自らが食品事故の原因とならないために、自己管理が重要となります。基本的に実行する必要があるものとして健康診断、検便があります。

健康診断は年1回以上、検便は月1回以上受けることが望まれます。もし、健康診断で何らかの問題が発生した場合や検便で「陽性」の結果が出た場合には、上司の指示を仰ぐ必要があり、特に検便で「陽性」の結果が出た場合には食品を取扱い作業には従事しない方が良いと思われます。

ただし、健康診断や検便はあくまで、自分が健康であるという目安に過ぎまでん。毎日、始業前に下痢、発熱、嘔吐などの症状がある場合には、上司に申し出て、指示を仰がなければなりません。特に下痢、嘔吐の場合はノロウイルスに感染している恐れがあるので、出社する前にまず、電話などで連絡することが感染リスクを低減させることになります。

「忙しいから」、「休むと迷惑をかける」という意識で、出勤する可能性があり、感染を拡大、食中毒事故を引き起こしたという事例もあります。

店舗や会社としても、従事者が遠慮せず、申し出ることができるような雰囲気を作っておくことが必要となります。ノロウイルスは症状が治まっても、依然ウイルスを排泄することが多く、長ければ2週間以上も排泄していることがあり、検査でウイルスを保有していないことを確認してから現場に復帰することが望ましい考えます。

コスト的な問題もあり、定期的な検便検査にノロウイルスを入れることは現実的ではないため、日頃の健康管理と意識が重要となります。

手荒れ対策も行っておくことも大切です。水を使うことの作業が多く手洗いや消毒の頻度も多いので、手荒れをしている従業員も多く、ひどい場合は医療機関で治療されることが良いと思いますが、手袋を二重にするなどの対策をし直接食品に触れる作業には従事しないようにさせる等のルール決め、必ず守ることが、食中毒事故を防止する上で最も重要なことではないかと考えます。

  

参考文献:月間HACCP