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調理場の安全対策

 

調理場での作業は様々な危険と隣りあわせであり、時には人命に関わる事故の危険性もあります。

調理中に起こる災害や事故を未然に防止するため、労働環境を整備することが重要です。

調理場での事故に対してどのような安全対策をとられていますか?

 

調理場での事故として、包丁やスライサーの刃で手指を切った、コンベアにはさまれて指を骨折した、滑って転倒し頭部を打撲した、油で火傷したなどの事例が挙げられます。

平成19年から21年までの3年間では1位「転倒」2位「はさまれ・巻き込まれ」3位「切れ・こすれ」となっています。これら事故例の防止対策ポイントを述べさせて頂きます。

 

転倒

 

従業員の一人ひとりが整理・整頓・清掃していれば、未然に防ぐことできるものです。

【事故例】

  • 作業中に水で濡れた床や落ちていた食材を踏んで足を滑らせた。
  • 食材を運搬中に、段差に気づかず躓き、転倒した。
  • 戸棚からはみ出ていた食器や器具に足をひっかけたり、側溝の蓋がずれていて足をとられ転倒した。

 

安全対策のポイント

床は水で濡れていたり油・食材などにより汚れている場合があるので、作業中でもこまめに拭取ることや床に勾配をつけて水捌けをよくするなど、水が溜まらないよう清掃を行う。

専用の滑りにくい履物を履き、靴底が磨り減ったら速やかに交換する。

床材が剥がれている箇所は早急に修繕し、段差のあるところには注意書きを掲示し喚起する。

通路には食器や器具、食品を置かないこと、戸棚からはみ出さないように保管する。

食品を運ぶときには走らない。

 

はさまれ・巻き込まれ

 

加工技術の進歩により大型の機械が使用されるようになって、服が巻き込まれたり、手を挟まれて指を骨折するなどの事故が多くなっています。これは機械の危険部分が露出していたり、操作中にとっさに手を入れるなど機械の運転停止を省略するなどの安全な作業手順を無視したことが原因となっている場合が多いと考えられます。

 

【事故例】

パンなどの生地を作るとき、手がローラーに挟まれて指を骨折したり、冷凍肉をミンチ機に入れるとき、押し込みすぎ軍手とともに手が巻き込まれた。

おにぎり成型中、具材を機械の中に落としたので取ろうとして指を挟まれ骨折した。

   

安全対策のポイント】

作業場での服装は巻き込みを防ぐため袖口を広げたり、サイズの合わないものを着用しない。

ローラー、ミキサーなどに安全ガードや非常スイッチを取り付け、非常時には必ずスイッチを切る。また、機械のトラブルが発生した場合には機械を止め、責任者に報告し、許可が出るまで操作しないこと。

切れ、こすれ

 

包丁やナイフ、スライサーの刃、割れたグラスの破片などが原因となり、食器の洗浄や機械の清掃作業中など常に起こりやすい事故である。

 

【事故例】

包丁で肉や野菜、魚介類をカット中に手を滑らせて指を切った。

スライサーで野菜をカット中に詰まったので、手で押し込んだらスライサーの刃で手を切った。

グラスを洗浄中、グラスが割れ、破片で手を切った。

 

【安全対策のポイント】

切れにくい包丁やナイフを使用すると、つい力を入れてしまうので、その際、滑って手を切ってしまうことが多いので、定期的に研いでおく。

カット作業時やスライサー等の刃を洗浄するときは、素材が特殊繊維の耐切創手袋を着用する。(但し、病原微生物による汚染の可能性があるので、必ず衛生手袋を耐切創手袋の上から着用すること)

スライサーなどの機械を使用するときは安全ガードを取り付け、専用の用具等を使用する。また、回転刃など回転部分のある機械の詰まり物を取る場合には電源を切り、完全に停止したことを確認し、専用の用具を使用する。

包丁の落下などで足のケガを防止するために、作業中はまな板やシンクの上に包丁を放置しない。

グラス類の洗浄をする場合にはひびや破損の有無を確認し、他のものとは区別して洗浄する。洗浄中に割れた場合はシンクの水を全て抜き取ってから耐切創手袋を着用してから処理する。また、食器やグラスなどの割れた破片を入れる。

ゴミ箱は、破片により割れたりしないような材質のものを使用する。

 

火傷

 

加熱調理器の高温になった表面に接触したり、高温の食品や飲み物を運んだりしたときに跳ねた熱湯や高温の油に触れることにより発生する。

 

【事故例】

オーブンから焼きあがった魚介類やパンを取り出すとき、使用後の加熱調理器に触れて手を火傷した。

天ぷらやフライを揚げているとき、油がはねて火傷した。

フライヤーの清掃を行う為、油を抜く作業中に高温の油が手にかかったり、食品を運搬中にバランスを崩し、スープが手にかかり火傷した。

 

【安全対策のポイント】

高温の鍋や調理器具等を持つ場合には鍋つかみや耐熱保護手袋を着用すると安全ですが、水に濡れていると熱が手に伝わり蒸気による火傷を引き起こす危険性があるので、乾燥した状態で使用すること。また、シリコンゴムで滑り止め付の手袋を着用する方法もあります。

使い捨て手袋が熱に溶けて手に張り付いてしまう材質でできているものがあるので、高温の食品を取り扱う際には使用しないこと。

天ぷらやフライを揚げる際には油がはねる危険性があることを常に考え、腕まくりなどをせず、決められた正しい服装で行うこと。

油の交換作業は、油が完全に冷めてから行い、加熱された釜、鍋などは他の作業員が接触しない安全な場所に置くこと。

 

今回は主な安全対策のポイントについて記述しましたが、調理場ではこのほかにも様々な事故が発生しています。このような事故を防ぐためには、5Sという衛生管理が重要であると考えます。皆様には今後とも5Sを徹底することで事故を未然に防いで安全な職場環境の構築に力を注いでいただきたいと思います。

 

参考文献「食と健康」