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不完全な殺菌にご注意!

 

 

野菜や果物等は、水洗で或る程度の細菌を除去できますが、幼児、高齢者、虚弱者への料理や喫食まで長時間を置く料理に使用する生食用野菜ついては、更に殺菌処理が必須となります。

この殺菌処理における留意点として、殺菌効力が劣化した殺菌液による不完全な殺菌処理の防止と、殺菌処理後の不適切な食品管理による細菌の増殖の抑制があります。

 

殺菌剤としての次亜塩素酸ナトリウム溶液

大量調理施設衛生管理マニュアルでは、野菜や果物を未加熱で提供する場合の殺菌の方法として、

 

「野菜・果物を流水で十分洗浄し、必要に応じて次亜塩素酸ナトリウムの200mg/Lの溶液に5分間、100mg/Lの溶液の場合は10分間又はこれと同等の効果を有する食品添加物として使用できる有機酸等で殺菌を行った後、十分な流水ですすぎ洗いを行うこと」

 

が規定されています。

 

次亜塩素酸ナトリウムによる殺菌機構は、 発生するラジカルな酸素による酸化力ではなく、次亜塩素酸(HClO)自体が細菌の細胞壁や細胞膜、細胞組織に化学反応を起こし、細菌の生存活動に不可欠な酵素を破壊することを利用しています。

 

次亜塩素酸ナトリウム溶液は、pHに応じて組成が変化します。

pH5付近ではほぼ全てが次亜塩素酸(HClO)として存在していますが、高pHになるにつれて、HClO量が減少し、代わりに次亜塩素酸イオン(CIO-)が増加してきます。

従って、pH5~5.5が最も殺菌力が強力に働くこととなります。

 

次亜塩素酸ナトリウムの原液は、高pHのアルカリ性なので、希釈するほどより高pHとなって殺菌力が低下します。

そこで、希釈した次亜塩素酸ナトリウム溶液に、酸を添加して 微酸性とし殺菌力を高め、調製後速やかに使用することで効果的な殺菌処理を実現することができます。

調製方法は、

次亜塩素酸ナトリウムの原液には「まぜるな危険」の注意表示があるとおり、決して酸を原液に直接添加してはいけません。

まず、大きく希釈した次亜塩素酸ナトリウム液を調製し、そこに酢酸の食酢をpH5~5.5となるように少量加えてください。

次亜塩素酸ナトリウムは強力な酸化剤でもあり、有機物の汚れなどと反応して効力が低下しますので、殺菌力にも限界があります。

効果的な生食用野菜の殺菌の作業手順については、残留塩素とpHを測定しながら標準化していきます。

 

① まず、野菜を10分間次亜塩素酸溶液に漬けて殺菌後、残留塩素とpHを測定してください。

② 次に、pH5~5.5となるように食酢を入れた次亜塩素酸ナトリウム溶液100mg/Lを用いて、①と同様の操作を繰り返して残留塩素とpHを測定してください。

③ 殺菌直後の野菜と喫食時間まで保存した野菜は、大腸菌群数の検査をして殺菌効果を検証してください。

④ 次亜塩素酸濃度を変えて同様の操作を繰り返し、最適な殺菌条件を定めます。

 

高濃度の残留塩素を測定するには、検査キットが多く市販されていますし、pH測定には、pH試験紙で行うことができます。

 

設備などの洗浄

設備などの洗浄とは、機械・設備などの汚れを取り除く清掃作業です。

大半の微生物は、食品残渣などの汚れと共存しているため、洗浄作業によって汚れを取り除くことで微生物を減少させることができます。

 

デンプン、タンパク質、脂肪など汚染物質によって使用する洗剤の種類が異なりますので、洗剤メーカーから提供されている情報に基づいて選択することで適切な洗浄を行うことができます。

 

 

殺菌

殺菌とは、積極的に微生物を制御し、微生物汚染度を減少させる作業です。

 

食品危害の大多数を占める微生物汚染からの防御の観点から、食品原材料を汚染した微生物や、食品製造工程中に混入した微生物の減少と増加の抑制をするために行う作業です。

 

殺菌処理を効果的に行うには、予め清掃・洗浄により微生物数を減少させておくことがポイントです。

食品工場で最も多用される微生物制御の手段は「加熱殺菌」です。

加熱殺菌は、単独の加熱殺菌工程以外の工程でも行われています。

例えば、煮沸、揚げ物、焼き物、妙り物工程など加熱をともなう多くの調理工程は、微生物制御の側面も持っていることは周知のことです。

加熱殺菌のポイント

加熱殺菌は、作業性・経済的などの見地から最も効果的な殺菌方法ですが、素材の中心温度や保持時間の管理などには十分な注意が必要です。

また、殺菌処理前に、微生物汚染を極力抑制するための対策が必要とされ、加熱殺菌後の食材の取扱いも十分な管理が必要です。