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食品検査の技術進歩と制度の変遷

 

食品偽装と検査技術

食品の消費期限や賞味期限の偽装、牛肉と偽って、豚肉を入れる、中国製を国産として販売するなど悪質な事件がマスコミを賑わしています。

しかし、つい最近まで国産黒毛和牛の育成頭数から考え、売られている国産黒毛和牛肉の量が多すぎるとか、新潟魚沼産のこしひかりの生産量より多くの魚沼のこしひかりが販売されていると言われても、それほど驚かなかったと思います。

これは疑わしくとも確かな証明ができないとあきらめていたためでしょう。

肉や米のDNA鑑定が安価で迅速にできる昨今では偽装者は不当競争防止法により罰せられ、消費者の怒りを買うことになります。

新しい分析法の確立と機器の進歩がもたらした結果です。

ポジティブリスト制度

残留農薬に関する事件としては昨年度に発覚した、事故米の食用への流用があります。

メタミドホスに汚染されたもち米、カビ毒汚染のうるち米やアセタミプリドに汚染されたうるち米等の事故米を流通させた事件です。報道によると、食用にできない米を巧妙な隠蔽工作により食用と見せかけて流通させたという事で大騒ぎになりました。

事件は悪質ですが、残留農薬に関していえば健康被害を起こすほどのことはないと言えます。事故米の流用は長年行っていたようですが、今回摘発された事故米は食品衛生法の改正、いわゆるポジティブリスト制が導入されたため事故米と認定されたと思われます。

ポジティブリスト制度の施行は平成18年5月29日からですが、それまでは規格基準のない農薬が検出されても問題になりませんでした。

米からメタミドホスやアセタミプリドが検出されても販売することができたわけです。

しかし、制度の施行後は流通させることはできません。政府から事故米を買い取り食用として流通させた業者はそのような事情を知っていて、それほど罪悪感がなかったかもしれませんが、事故米流出の報道により国民から大きな非難を浴びることになりました。

法律の改正により、事情が変わってしまったのです。我々試験検査機関で働く者も法律の改正により大きく変わることがあります。

GLP制度の導入

食品検査にGLP法が導入されたのもその例です。検査する者は試験作業工程の記録が求められ、多くの書類を作成しなければならなくなりました。

GLP法の導入のきっかけは輸入飲料水のトラブルと聞いています。規格基準違反になった飲料水のデータの提出を求められ、多くの不備な点が指摘されました。正確な検査結果であることを証明するため、GLP法は必要となったのです。

検査員の測定技術と経験は今も必要ですが、さらに試験検査機関は組織として個人の検査員の測定結果の正確さを保証しなければなりません。

そのため、組織の職員数や機器を整え、第三者機関である信用保証部門を設置することや、誰にでもわかりやすいように試験操作の標準化を図り、検体、試薬、標準品の扱いのマニュアル化やその管理をする必要があります。

また、正確な数値である証明のためには内部管理事業や外部精度管理事業に参加し、検査員に正確な数値を提出させる事も必要です。

多くの測定記録や試験操作マニュアルは測定値の改ざんを難しくし、異常値の原因の究明が容易になります。GLP法は検査員が正しい測定値を提出し、組織がその正しさを証明するためのもので、正確な測定のために何をすべきかを考えれば良いと思います。