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細菌性赤痢

 

かつての日本では結核をはじめ、さまざまな感染症が猛威を振るい、多くの人々の命が奪われていました。細菌性赤痢も例外ではなく、その中でも幼児の赤痢(「疫痢(えきり)」という *後述)は、肺炎と並ぶ幼児死亡の二大原因でした。

医療技術の進歩によって日本では近年著しく減少しましたが、現在でもアジアでは年間9100万人が感染し、死亡者数は栄養状態の悪い小児を中心に41万人に達すると推定されています。

症状

細菌性赤痢は通常1~3日の潜伏期の後に、全身倦怠感、悪寒を伴う急激な発熱で発症し、発熱が1~2日続いた後、水様性下痢、腹痛、しぶり腹(便意を激しく催すが、渋ってよく通じない症状)、膿粘血便などのいわゆる赤痢症状が出現する腸管感染症です。

赤痢菌

赤痢の原因となる赤痢菌属は1898年に日本の細菌学者である志賀潔(1871~1957)が発見したのに因み、Shigella(シゲラ)属と名付けられました。

血清学的にShigella dysenteri(A群)、Shigella flexneri(B群)、Shigella boydii(C群)、Shigella sonnei(D群)の4群に分類されます。

近年の傾向として、Shigella sonneiによるものが多くみられ、全体の70~80%を占めています。また、Shigella sonneiによるものは比較的症状が軽く、軟便や軽度の発熱で経過することが多いのも特徴です。

日本では年間数百例、特に海外旅行者が旅先(特にアジア、アフリカなど)で感染し、国内に持ち込む例が多くみられます。

予防

赤痢菌は微量の菌により感染が成立するため、感染が拡大しやすく、健康被害も生じやすくなります。特に小児や高齢者では重症化しやすいので注意が必要です。

近年日本で発生している細菌性赤痢の過半数は国外感染であり、国内感染についてはそれらの国外感染者からの二次感染や輸入食品の汚染による感染が推測されています。

感染予防策としては、十分な加熱調理や石鹸による手洗いの励行が基本です。渡航に際しては、渡航先の流行状況を把握すると共に、流行地へ渡航する場合には生水、氷、生の魚介類、生野菜、カットフルーツなどの喫食を避けることが肝要です。

二次感染を防ぐためには、患者や無症状病原体保有者を早期に探知して治療し、排菌しなくなったことを確認する必要があります。

近年減少したから、昔の病気だからといって軽視せず、一人一人が正しい知識を持って予防に努めることが重要だといえます。

 

(*)えきり【疫痢】

幼児の赤痢で、下痢、嘔吐とともに顔面蒼白、手足が冷たいなどの循環障害や、意識が混濁したり、ひきつけたりするなどの神経系の障害のような中毒症状の強く現れたものをいう。特に3~4歳に多い。昔は肺炎と並んで幼児死亡の二大原因であったが、現在はほとんどなくなり、しかも抗生物質、輸液などで救命できるようになった。

参考文献: 国立感染症研究所 感染症情報センター home page

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