信頼性確保に係る平成24年改正の水道法施行規則について | 関係法令・資料集 | 水質検査 | 株式会社 東邦微生物病研究所

信頼性確保に係る平成24年改正の水道法施行規則について

 

登録水質検査機関等に委託して行うことが認められている水道法に基づく水質検査に関して、検査機関の不祥事による信頼性の低下と、検査価格の過当競争に起因する水質検査の質の低下が問題視されたことから、平成 22 年度に厚生労働省に「水質検査の信頼性確保に関する取組検討会」が設置され、水質検査の信頼性を確保するための取組に関する報告書を取りまとめられました。

そして、本報告書に基づいて制度の見直しが行われ、平成 23 年 10 月3日に水道法施行規則の一部を改正する省令(平成 23 年厚生労働省令第 125 号)が公布され、平成 24 年4月1日から施行されました。

 

改正水道法施行規則(抜粋)

第十五条

1~7項 略

 

8  法第二十条第三項 ただし書の規定により、水道事業者が第一項及び第二項の検査を地方公共団体の機関又は登録水質検査機関(以下この項において「水質検査機関」という。)に委託して行うときは、次に掲げるところにより行うものとする。

一  委託契約は、書面により行い、当該委託契約書には、次に掲げる事項(第二項の検査のみを委託する場合にあっては、ロ及びヘを除く。)を含むこと。

イ 委託する水質検査の項目

ロ 第一項の検査の時期及び回数

ハ 委託に係る料金(以下この項において「委託料」という。)

ニ 試料の採取又は運搬を委託するときは、その採取又は運搬の方法

ホ 水質検査の結果の根拠となる書類

ヘ 第二項の検査の実施の有無

二  委託契約書をその契約の終了の日から五年間保存すること。

三  委託料が受託業務を遂行するに足りる額であること。

四  試料の採取又は運搬を水質検査機関に委託するときは、その委託を受ける水質検査機関は、試料の採取又は運搬及び水質検査を速やかに行うことができる水質検査機関であること。

五  試料の採取又は運搬を水道事業者が自ら行うときは、当該水道事業者は、採取した試料を水質検査機関に速やかに引き渡すこと。

六  水質検査の実施状況を第一号ホに規定する書類又は調査その他の方法により確認すること。

 

水道法施行規則の主な改正事項

 ①水道事業者等の委託

 

・ 適切な委託の確保

 (書面契約、適切な委託料、迅速な検査、日常業務確認調査による検査内容確認、臨時検査の実施等)

 

・ 適切な業務発注の確保

 (適切な特記仕様書や費用積算、精度管理状況の把握、低入札価格調査等の活用、落札業者の積算確認)

 

・ 水道水質管理計画の充実(委託内容の具体化)

 

②登録水質検査機関の水質検査

 

・ 水質検査の適正化(検査方法告示や標準作業書による検査実施、再委託禁止、試料採取や運搬方法の明示)

 

・ 保存書類(検査結果の根拠書類、検査工程毎の時刻等)の追加

 

・ 登録、更新及び変更時の審査充実(検査区域、業務規程の検査料金・受託上限、受託実績)

 

・ 検査方法告示の見直し(試験開始迄の時間、検量線濃度範囲・点数、空試験実施、標準試料の差し込み分析等)

 

③国が実施する調査

 

・ 登録水質検査機関への日常業務確認調査の検討(調査方法、調査対象機関選定及び調査結果の評価等)

 

・ 外部精度管理調査の見直し(実地調査により是正措置の不十分な機関を要検証機関とすべく階層化評価の見直し)

  

検査方法告示については、以下の事項を明確化するよう改正されています。

 ・  水道水以外の高濃度試料を分析する場合の措置

・  試料採取から前処理を含む試験の開始までの時間の明確化

・  検量線濃度範囲及び検量線の点数の明確化

・  空試験の実施と空試験の結果問題があった場合の措置

・  連続試験の際における適切な標準試料の差し込み分析

  

水道事業者等の水質検査に関する事項

 

水道法第20条第1項において、水道事業者等により供給される水が水質基準に適合するかどうかを判断するための水道水質の定期及び臨時の検査が水道事業者等に義務づけられています。

水道事業者等は、地方公共団体の機関又は登録水質検査機関(以下「水質検査機関」という。)に水質検査を委託して行う場合においても、水質検査の結果に責任を持たなければならず、当事者間で明確な委託契約を締結し、速やかに水質検査が遂行される体制を確立しなければなりません。

 

(1)  改正規則第15条第8項第1号により、水道事業者等が水質検査を水質検査機関に委託する場合は、書面により直接契約を締結しなければなりません。

なお、登録水質検査機関は、法第20条の4第1項第1号に定める登録基準により、法第20条第1項に規定する水質検査を行うために必要な能力を有していることが求められることから、業務の全部又は一部を別の者に再委託する内容の委託契約を締結することは認められません。

 

(2)改正規則第15条第8項第1号ニに定める「採取又は運搬の方法」には、採取日程、採取地点、試料容器、採取方法、運搬主体及び運搬方法を含めること。

 

(3)改正規則第15条第8項第1号ホに定める「水質検査の結果の根拠となる資料」には、分析日時及び分析を実施した規則第15条の2第5号に定める検査員(以下「検査員」という。)の氏名を示した資料、検量線のクロマトグラム並びに濃度計算書を含めること。

 

(4)臨時検査の委託契約を定期検査の委託契約と別途締結する場合、改正規則第15条第8項第1号ヘに基づき、定期検査の委託契約において、臨時検査は別の契約に基づき委託することを明記すること。

また、臨時検査の委託先を選定する際には、当該委託先となる水質検査機関が、水道事業者等の水道施設や水道原水の状況等を把握しており、水道事業者等と緊密な連絡体制をとることが可能であることを確認するように努めること。

なお、継続的に水質を評価する観点から、定期検査と臨時検査の委託先は同一の水質検査機関であることが望ましい。

 

(5)改正規則第15条第8項第3号の規定は、水道事業者等が水質検査を委託する際に適切な水質検査の実施が困難になるほどの低廉な価格で業務を委託する事例が発生していることから、委託する水質検査機関の選定に当たり一定の価格競争が生じる場合においても、水質検査の信頼性を確保するために必要な費用を負担した上で、適切な委託形態を確保することを趣旨としたものです。

従って、水道事業者等は、委託する水質検査業務の内容を契約において明らかにし、検査価格を積算した上で水質検査業務を発注することが求められます。

また、地方公共団体の入札制度にのっとった低入札価格調査制度又は最低制限価格制度を活用するとともに、法第20条の10第2項の規定に基づいて、登録水質検査機関に財務諸表等の閲覧又は謄写を請求し、登録水質検査機関の経理状況や事業の状況の把握、落札した検査料金の積算等を確認するよう努めなければなりません。

 

(6)改正規則第15条第8項第4号及び第5号の規定は、水道事業者等が水質検査を水質検査機関に委託する場合においても、水質基準に関する省令の規定に基づき厚生労働大臣が定める方法(平成15年7月22日厚生労働省告示第261号。以下「検査法告示」という。)に従って試料の採取及び運搬を速やかに実施することを趣旨としたものです。

従って、水道事業者等が委託する水質検査機関を選定する際には、試料の採取地点から検査施設への試料の運搬手段や運搬経路にも着目し、試料の運搬の速やかな実施が確実であることを確認することが求められます。

 

(7)改正規則第15条第8項第6号の規定により、水道事業者等は、水質検査の結果の根拠となる書類、精度管理の実施状況及び厚生労働省等による外部精度管理調査に係る資料、水質基準項目に関する品質管理の認証(水道GLP、ISO/IEC17025等)取得やこれに類する取組の状況に関する書類を確認するとともに、検査施設への立入検査及び試料のクロスチェック等、実施の水質検査機関における水質検査の業務の確認に関する調査(以下「日常業務確認調査」という。)を実施し、水質検査機関の技術能力の把握に努めることが求められます。

 

(8)水道事業者等が規則第15条第6項の規定に基づき策定する水質検査計画に、同条第7項第5号に規定されている委託の内容として、以下の事項を記載するとともに、当該水質検査計画にのっとって水質検査を委託しなければなりません。

 

1)委託の範囲

①具体的な検査項目、頻度

②試料の採取及び運搬方法

③臨時検査の取扱い

2)委託した検査の実施状況の確認方法